👉 本記事は「生前対策シリーズ」の一部です。
シリーズ全体の一覧は記事の末尾にまとめています。
🍀はじめに
今こそ始めたい生前対策
生前対策と聞くと、「うちはまだ元気だし、そんなに財産もないから大丈夫」と思う方も少なくありません。しかし、相続の現場では「もっと早く準備しておけば…」という声が後を絶ちません。準備を後回しにすることで、家族間の話し合いが難しくなったり、判断能力が低下して手続きが進められなくなるケースは、岡場・北神地域でも日常的に起きています。
生前対策とは、自分の意思を形にし、家族の将来の負担を減らすための事前設計です。遺言書だけでなく、任意後見契約や財産管理委任契約、家族信託、死後事務委任契約などを状況に応じて組み合わせることで、将来への安心をより確かなものにできます。
生前対策は“選べる”時代へ
以前は「遺言」や「成年後見制度」など限られた手段しか知られていませんでしたが、近年は民事信託(家族信託)や見守り契約など、柔軟に設計できる選択肢が増えました。例えば、一人暮らしで入院や施設入所に備える場合は「見守り契約+財産管理委任契約」。不動産を確実に承継させたい場合は「遺言+信託」。このように、目的や家族構成、資産の内容によって組み合わせを変えられるのが、現代の生前対策の特徴です。
このシリーズについて
本記事は、岡場・北神エリアの司法書士事務所「INFINIS LEGAL.」が執筆する生前対策シリーズの第1回です。今後、各回で「遺言の種類と選び方」「任意後見・財産管理委任契約の活用法」「民事(家族)信託の実務と注意点」「死後事務委任契約でできること」などを1テーマずつ掘り下げて解説していきます。シリーズを通して読むことで、ご自身やご家族に合った生前対策プランを自分で選べるようになることを目指します。
🍀岡場・北神地域の事情と生前対策の必要性
神戸市北区や三田市、西宮市北部といった地域は、持ち家比率が高く、不動産に家族の思いが深く刻まれているケースが多いと思われます。また、特に神戸電鉄沿線は、市街地や大阪方面からの移動時間が比較的長く、電車の本数や時間帯にも制約があるため、遠方に住む子ども世代が頻繁に訪問するのは難しい地域です。このため、不動産管理や定期的な見守り、生活支援の仕組みなどを事前に契約で整えておく重要性は、都市部以上に高いといえます。
【事例1】岡場駅近くの一人暮らし高齢者のケース
岡場駅近くにお住まいの80代女性から、「一人暮らしで入院が決まったが、預金の引き出しや公共料金の支払いができなくなるのが不安」という相談を受けました。ご本人には判断能力がありましたが、入院中の生活費や医療費の支払い、郵便物の管理など、日常的な事務が滞る恐れがありました。
このケースでは、まず見守り契約を結び、定期的な安否確認と郵便物のチェックを実施。並行して財産管理委任契約を締結し、病院への支払い手続きや公共料金の口座引き落とし手続きを代理しました。結果として、入院中もご本人は治療に専念でき、退院後も契約を継続して安心して暮らしています。北神地域では、こうした遠方に家族がいる単身高齢者のケースが増えており、地元の司法書士だからこそ地域特有の生活動線や交通事情を踏まえた提案が可能です。
【事例2】遺言と死後事務委任で“残された家族の負担ゼロ”に
西宮市在住の70代男性から、「相続のことは遺言で決めるが、葬儀や役所手続き、公共料金の解約など死後の細かい事務を家族に任せるのは心配」という相談がありました。
ご本人は奥様を遺言執行者に指定する予定でしたが、奥様も高齢で負担が大きいと判断。そこで、遺言書と並行して死後事務委任契約を締結し、司法書士が契約上の受任者として葬儀・埋葬・役所届出・光熱費や通信契約の解約まで包括的に担当する体制を整えました。結果として、奥様は精神的な負担を大幅に減らし、相続書類の確認や署名押印だけに集中できました。北神地域・岡場周辺に隣接する西宮市北部では、ご家族が遠方に住んでいるケースも多く、この遺言+死後事務委任の組み合わせは大きな安心材料になります。
🍀生前対策の全体像 — 4つの柱
- 遺言書(公正証書・自筆証書+保管制度) — 誰に何を承継させるかを明確にし、死後の混乱を防ぐ。
- 判断力低下への備え(任意後見契約・財産管理委任契約・見守り契約) — 日常生活の金銭管理や手続きを代理できる体制をつくる。
- 民事(家族)信託 — 不動産・預金などを受託者に託し、管理・運用・承継を計画的に行う。
- 死後事務委任契約 — 葬儀・埋葬・役所手続・解約など、死後の事務処理を信頼できる人に任せる。
これらは単独で使うこともできますが、組み合わせることで効果が飛躍的に高まるのが実務の実感です。
🍀失敗しない生前対策の進め方
- 現状の整理 — 資産・家族構成・健康状態を把握
- 優先順位の決定 — 今すぐ必要なものと将来の備えを分ける
- 契約や遺言の設計 — 公証役場・金融機関・司法書士事務所との調整
- 運用・見直し — 定期的なメンテナンスで契約の効果を維持
こうして計画的に進めることで、急な病気や事故にも対応できる体制が整います。
そしてそれは自分のためだけでなく、残される家族への最大の思いやりでもあるのです。
★次回予告★
次回は「遺言書の種類と選び方」をテーマに、公正証書遺言と自筆証書遺言のメリット・デメリット、そして自筆証書遺言書保管制度の活用方法を詳しく解説します。
このシリーズを通して、岡場・北神地域の皆さまが安心して未来を迎えるための準備を一緒に考えていきましょう。
「生前対策シリーズ」
- 第1回:元気なうちに始める「生前対策」完全ガイド(本記事)
- 第2回:公正証書遺言と自筆証書遺言の選び方(公開予定)
- 第3回:任意後見・財産管理委任・見守りの使い分け(公開予定)
- 第4回:家族信託の実務と銀行対応(公開予定)
- 第5回:死後事務委任契約で“死後の不安”を減らす(公開予定)
- 第6回:複合設計(遺言+信託+後見)成功パターン集(公開予定)
事務所案内
INFINIS LEGAL.(インフィニス・リーガル司法書士事務所)
司法書士 高橋 直文
営業時間:平日 9:00〜17:00
電話:078-959-5522
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